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​私たちは今般の日本学術会議の会員任命拒否に対し、「近畿大学関係者有志」として抗議声明を出すことにいたしました。本声明は、広く近畿大学関係者(教職員、学生、卒業生など)からの賛同を募っています。ご賛同いただける方は、署名フォームに入力して送信して下さい。

日本学術会議第25期新規会員任命拒否に対する抗議声明

2020年12月8日 近畿大学関係者有志

 

 去る10月1日、菅義偉内閣総理大臣は、日本学術会議が会員として推薦した 105 名のうち6名の任命を拒否しました。日本学術会議の会員は、同会議の推薦に基づき内閣総理大臣が任命することになっており、それを規定する日本学術会議法7条は、その解釈・運用において、推薦された人物を任命しないということは想定されていません。それは、これまでに何度も国会で確認され、恣意的な解釈の介在する余地はなかったはずです。ところが菅首相は、恣意的な法解釈による任命拒否を「前例踏襲でよいのか」という美辞麗句で取り繕いつつ、「説明できることと、できないことがある」として説明を放棄。あまつさえ、日本学術会議に問題があるとして行政改革の対象とすると発表し、論点をすりかえようとしています。12月4日の会見では、「縦割り、既得権益、悪しき前例主義の打破」という言葉で本件に言及しましたが、それは即ち、国民に説明できない行為を糊塗することで批判を躱し、日本学術会議を一方的に“敵”と見なすことで異論を封殺しようとしているにほかなりません。為政者が説明責任を果たさず、一部の国民を槍玉に挙げて自己の正当化を図るという横暴。これを許してしまったら、我が国の民主主義は根底から破壊されてしまいます。
 今回、任命を拒否された6名は、いずれもそれぞれの分野で高く評価されている研究者ですが、研究を正当に評価することは研究者同士でも難しく、それゆえ慎重な選考過程を経て日本学術会議の推薦へと至ります。いうまでもなく、専門家ではない政権がその研究を学術的に評価することは不可能であり、今回の任命拒否が研究それ自体の評価と無関係になされたことは明白です。首相の口から任命拒否理由は明確にされていないものの、6名は2015年の安保法制に反対していた等、政権に批判的な立場を表明しており、それゆえ排除されたのではないかという報道もあります。もしそれが事実であれば、日本学術会議法の規定に反するばかりでなく、憲法が保障する言論の自由、学問の自由に対する脅威ともなり、看過することはできません。また、任命拒否理由がほかにあったとしても、それを説明することなく一方的に任命を拒否することは、当該研究者のこれまでの研究を全否定することと同義です。のみならず、その6名はいわれなき誹謗中傷さえ受けており、任命拒否のもたらす影響は計り知れません。
 政権によるこうした行為は、いずれ様々な方法で他の研究者にもその矛先を向けてくるのではないでしょうか。それにより、学術界には疑心暗鬼が瀰漫し、多くの研究者が政権の意向を忖度することになるでしょう。私たちは、我が国の学術界が戦前・戦時下にそうした道を歩み、それによって悲劇的な結末を迎えた歴史を知っています。そして敗戦後、日本学術会議がその反省の上に設立されたという経緯に照らしてみるならば、今回、日本学術会議が標的とされたことは極めて象徴的な出来事であるといってよいでしょう。それゆえ私たちは、これが学問の自由を脅やかすきわめて深刻な事態に発展してゆくことを恐れ、危機感を募らせています。もし今回の任命拒否が不問に付されるのであれば、例えば政権の見解や方針にそぐわない研究が非難され、それを理由に種々の不利益を被るという未来も想像に難くありません。決して日本学術会議という一組織にとどまることではなく、学術研究すべてに関わる深刻な問題なのです。
 さらに、こうした恣意的な法解釈・行政運用が黙認され、常態化してしまえば、国民生活のあらゆる場面に影響を及ぼし、私たちを圧迫してくるでしょう。研究者だけの問題ではないのです。この国に暮らす国民として、そして研究と教育に携わる大学人として、これを容認することは断じてできません。
 政治権力と学問との力関係は対等ではありません。であるからこそ、中立と称して声を上げないことは、政権の放濫に与するも同然であると考えます。よって、私たちは今般の任命拒否に対し強い抗議の意を示すともに、任命拒否理由の開示、および、拒否された6名の速やかな任命を求めます。

以上

 

呼びかけ人(五十音順):阪本洋三(文芸学部)、白水士郎(文芸学部)、辻和彦(文芸学部)、中島敬方(経営学部)、藤巻和宏(文芸学部)

​賛同者(受付順):盛加代子(文芸学部)、北川忠生(農学部)、福田健太郎(法学部)、小宮真樹子(文芸学部)、吉田朱美(文芸学部)、森口ゆたか(文芸学部)、新谷和之(文芸学部)、林公子(文芸学部)、菅原賢悟(理工学部)、濵田泰彦(文芸学部卒業生)、日置智津子(社会連携推進センター)、吉田唯(元インターナショナルセンター)、人見佐知子(文芸学部)、梅山いつき(文芸学部)、杉浦健(教職教育部)、有馬麻理亜(経済学部)、松本修(文芸学部)

匿名賛同者:2名

※お名前を公開可とされた方は、ご所属と併せて公開しております。ただし、職種・職位・雇用形態の別は示しません。また、在学生は一律匿名扱いとします。

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